「桜餅」の語源と関東・関西で違う形の由来


1. 「桜の葉で包んだ餅」が名前の由来

「桜餅」の名前はそのまま、桜の葉の塩漬けで餅を包んだ和菓子であることに由来します。桜の葉の香りと塩気が甘い餅と調和し、春を象徴する和菓子として親しまれています。

2. 関東の桜餅は「長命寺」

関東の桜餅は長命寺(ちょうめいじ)桜餅と呼ばれ、小麦粉の生地をクレープ状に薄く焼き、あんこを包んで桜の葉で巻いたものです。1717年頃、隅田川沿いの長命寺の門番だった山本新六が、落ち葉の桜の葉を塩漬けにして餅に巻いて売り出したのが始まりとされています。

3. 関西の桜餅は「道明寺」

関西の桜餅は道明寺(どうみょうじ)桜餅と呼ばれ、道明寺粉(もち米を蒸して干し、粗く砕いたもの)であんこを包み、桜の葉で巻いたものです。つぶつぶとした食感が特徴で、道明寺粉の名前は大阪の道明寺に由来します。

4. 隅田川の桜が誕生のきっかけ

長命寺桜餅が生まれたきっかけは、隅田川沿いに植えられた桜並木の落ち葉でした。大量に落ちる桜の葉を何かに活用できないかと考えた山本新六が、塩漬けにして餅に巻くことを思いついたと伝えられています。

5. 桜の葉は大島桜が最適

桜餅に使われる桜の葉は、主に**大島桜(オオシマザクラ)**の葉です。大島桜の葉は他の品種に比べて毛が少なく、柔らかくて大きいため塩漬けに適しています。全国の桜餅用の桜の葉の約7割は静岡県松崎町で生産されています。

6. 桜の香りの正体は「クマリン」

桜餅の独特の香りの正体はクマリンという芳香成分です。生の桜の葉にはほとんど香りがありませんが、塩漬けにすることで細胞が壊れ、クマリンが生成されて甘い桜の香りが生まれます。桜餅の香りは塩漬けという加工によって初めて引き出されるものです。

7. 葉を食べるかどうかは好み

桜餅の葉を食べるか剥がすかは、古くから議論されるテーマです。全国和菓子協会は「お好みで」としていますが、長命寺桜餅の老舗は「葉は剥がして食べるもの」としています。葉ごと食べると塩気と香りが加わり、剥がすと餅本来の甘さが際立ちます。

8. 春の和菓子の代表格

桜餅は日本の春を代表する和菓子であり、ひな祭りや花見の季節に欠かせない存在です。和菓子店では例年2月頃から販売が始まり、桜が散る4月中旬頃まで店頭に並びます。桜餅の登場は春の訪れの合図でもあります。

9. 「桜色」のもとは食紅

桜餅のピンク色は天然の桜の色ではなく、**食紅(しょくべに)**で着色されたものです。桜の花のイメージに合わせて淡いピンク色に染めており、白いままの桜餅もありますが、ピンク色のほうが「桜餅らしい」として広く定着しています。

10. 海外でも「Sakuramochi」として知られる

桜餅は海外の日本食ブームとともに「Sakuramochi」として知られるようになっています。桜の葉の香り、ピンク色の見た目、もちもちした食感が人気を集め、春の日本文化を体験できる和菓子として国際的な知名度を高めています。


隅田川の桜の落ち葉から生まれた長命寺桜餅と、道明寺粉で作る関西の道明寺桜餅。同じ「桜餅」でありながら形も食感も異なるこの和菓子は、桜の葉が放つクマリンの香りとともに、日本の春を甘く包み込みます。