「おてんば」の語源はオランダ語?元気な女の子を表す言葉の由来
1. 「おてんば」とはどんな意味か
「おてんば」は、活発で元気すぎる女の子、いわゆる「じっとしていない、はしゃぎ回る女の子」を指す言葉です。現代では比較的ほめ言葉に近いニュアンスで使われることも多いですが、かつては「行儀が悪い」「落ち着きがない」というマイナスの意味合いが強い言葉でした。
2. 有力説はオランダ語「ontembaar」
語源として最も広く支持されているのが、オランダ語の「ontembaar(オンテンバール)」から来たという説です。「ontembaar」は「馴らすことができない、手がつけられない」という意味の形容詞で、江戸時代に長崎の出島を通じて日本に入ってきた言葉だとされています。
3. 江戸時代のオランダ語の影響
江戸時代、日本はオランダとの貿易を通じてさまざまな言葉を取り入れました。「ビードロ(vidro)」「カルタ(carta)」「コップ(kop)」など、今でも使われる言葉の多くがオランダ語由来です。「おてんば」もその流れの中で日本語に溶け込んだ可能性があります。
4. 「お転婆」の漢字は後からつけた当て字
「おてんば」という音が先にあり、「お転婆」という漢字表記は後から意味に合わせて当てたものです。「転ぶ婆さん」ではなく、「転び回る、はねまわる」というイメージで「転」の字を使ったとされています。このように音が先で漢字が後から当てられた言葉を「当て字」と呼びます。
5. 「馴らしがたい」から「活発な女の子」へ
オランダ語「ontembaar」が「馴らしがたい→手がつけられない→はしゃぎ回る→活発な女の子」という流れで意味が変化したと考えられています。外来語が日本語に定着する過程でニュアンスが変わるのはよくあることで、「おてんば」もその典型的な例です。
6. 別説:日本語起源説も存在する
オランダ語説以外にも、日本語固有の語源説があります。「お転び婆(おてんびばあ)」が縮まったという説や、「点場(てんば)」という言葉から来たという説などです。しかし現在の研究ではオランダ語説が最も根拠があるとされており、多くの語源辞典もこちらを採用しています。
7. 英語でいう「tomboy」に相当する
英語には「tomboy(トムボーイ)」という言葉があり、「男の子のように活発な女の子」という意味です。「おてんば」と非常に近い概念で、異なる言語・文化が同じような概念を独自の言葉で表現しているのは興味深いことです。
8. 江戸時代の女性像と「おてんば」
江戸時代の女性には「おしとやか」で「控えめ」であることが求められていました。そのため「おてんば」はその規範からはずれた振る舞いを指す言葉として使われ、当初はどちらかといえばネガティブな意味合いを持っていました。
9. 明治・大正時代の変化
明治・大正時代になると、女性の社会進出や教育の広がりとともに「おてんば」のイメージが少しずつ変わり始めます。活発で元気な女の子が好ましいとされる価値観が生まれ、「おてんばさん」という呼び方にも愛情が込められるようになっていきます。
10. 現代語としての「おてんば」
現代では「おてんば」はほぼ死語に近くなりつつあります。かつては女の子に対してよく使われましたが、今では年配の人が使うことが多く、若い世代には「やんちゃ」「元気すぎる」などの表現の方が自然に聞こえます。ただし文学作品や時代劇では現在も生き続けている表現です。
オランダ語で「馴らしがたい」という意味だった言葉が、長崎の出島を通じて日本に渡り、活発な女の子を指す日本語として定着した「おてんば」。漢字の「お転婆」はその後につけられた当て字であり、外来語が日本語に溶け込む過程を示す好例です。