「草餅」の語源は"草を混ぜた餅"?よもぎ餅になるまでの歴史


1. 「草を入れた餅」がそのまま語源

「草餅(くさもち)」の語源はそのまま、草(野草)を混ぜて搗(つ)いた餅を意味します。餅に香りのある野草を練り込むという素朴な発想から名づけられた、見た目も名前もわかりやすい和菓子です。

2. もとは「母子草(ははこぐさ)」を使っていた

現在の草餅はよもぎを使うのが一般的ですが、もともとは**母子草(ははこぐさ)**を使っていました。中国の風習が日本に伝わった当初は母子草を餅に混ぜるのが正式でしたが、「母と子を搗(つ)く」ことに通じて縁起が悪いとされ、やがてよもぎに替わりました。

3. よもぎに替わったのは平安時代頃

母子草からよもぎへの切り替えが起きたのは平安時代頃とされています。よもぎは邪気を払う薬草として古くから重用されており、香りが強く色も鮮やかな緑色になることから、草餅の材料として最適だと考えられるようになりました。

4. 端午の節句との深い関係

草餅はもともと**端午の節句(5月5日)**に食べる行事食でした。中国では3月3日の上巳の節句に母子草の餅を食べる風習があり、日本に伝わった後、邪気を払うよもぎの餅として端午の節句と結びつきました。現在では季節を問わず販売されています。

5. よもぎの香りには薬効がある

よもぎは古くから薬草として利用されてきた植物で、独特の香りにはシネオールなどの成分が含まれています。消化促進や血行改善の効果があるとされ、草餅を食べることは美味しいだけでなく薬膳的な意味合いもあったのです。

6. 緑色は天然のよもぎの色

草餅の鮮やかな緑色はよもぎの葉の天然色素によるものです。よもぎをすり潰して餅に練り込むことで、着色料を使わずとも美しい緑色に仕上がります。ただし市販品の中には着色料で色味を調整しているものもあります。

7. 「よもぎ餅」と「草餅」は同じもの

「よもぎ餅」と「草餅」は基本的に同じものを指します。材料に着目して「よもぎ餅」、和菓子としての総称として「草餅」と呼び分けることもありますが、明確な区別はありません。地域によってどちらの呼び名が一般的かが異なります。

8. あんこ入りとあんこなしがある

草餅にはあんこを中に包んだものと、あんこを入れずに餅だけで食べるものの二種類があります。あんこ入りは和菓子屋で販売される菓子としての草餅、あんこなしはきな粉や砂糖醤油をつけて食べる家庭的な草餅という傾向があります。

9. 全国各地に名物の草餅がある

草餅は全国各地に名物として知られるものがあります。東京・向島の「長命寺前草餅」、奈良・東大寺周辺の草餅、京都の各和菓子店の草餅など、それぞれに製法や味わいの特色があり、地域の和菓子文化を支えています。

10. 春の訪れを告げる和菓子

草餅は早春に芽吹くよもぎを使うことから、春の訪れを告げる和菓子として位置づけられています。2月後半から3月にかけて和菓子屋に草餅が並び始めると、春がすぐそこまで来ていることを実感する。草餅は味覚で季節を知らせてくれる菓子です。


母子草からよもぎへ、邪気を払う薬草の餅として千年以上の歴史を持つ草餅。「草を混ぜた餅」という素朴な名前の中に、中国伝来の節句の風習と日本人の季節感、そして植物への信頼が込められています。