「花火」の語源は"花のような火" 江戸時代に花開いた夏の風物詩の由来
1. 「花のように美しい火」が語源
「花火(はなび)」は「花」+「火」の組み合わせで、夜空に花のように美しく咲き開く火を意味します。炎が放射状に広がる様子を花の開花に見立てた、詩的な命名です。
2. 日本の花火の歴史は戦国時代から
日本に火薬が伝わったのは鉄砲とともに1543年とされていますが、観賞用の花火が登場したのは戦国時代末期から江戸時代初期にかけてです。徳川家康が1613年に駿府城で花火を観覧したという記録が、日本で最初期の花火観覧の記録とされています。
3. 「たまや〜」「かぎや〜」の掛け声
花火大会での「たまや〜」「かぎや〜」という掛け声は、江戸時代の二大花火師「玉屋」と「鍵屋」の屋号です。隅田川の花火大会で両者が技を競い合い、観客が応援するように屋号を叫んだのが始まりとされています。
4. 鍵屋は1659年創業の老舗
「鍵屋」は1659年(万治2年)に初代・弥兵衛が創業した花火師の老舗です。玉屋は鍵屋から独立した弟子が開いた店ですが、1843年の火事で廃業しました。現在も屋号が残っているのは鍵屋のみですが、掛け声では「たまや」のほうが人気があったとされています。
5. 隅田川花火大会のルーツは「両国川開き」
隅田川花火大会のルーツは、1733年(享保18年)に始まった「両国川開き」の花火です。前年の大飢饉やコレラの流行による死者の慰霊と悪疫退散を祈願して、八代将軍・徳川吉宗の命で行われたのが始まりとされています。
6. 日本の花火は丸い、海外の花火は開く
日本の打ち上げ花火は真円に近い球状に開くのが特徴で、これは「星」と呼ばれる火薬玉を球殻状に並べる日本独自の技術によるものです。海外の花火は筒状に火薬を詰めるため、円盤状や扇状に開くことが多く、日本の球形花火は世界的に高く評価されています。
7. 花火の色は金属の炎色反応
花火の色はさまざまな金属の「炎色反応」によって生まれます。ストロンチウムは赤、バリウムは緑、銅は青、ナトリウムは黄、マグネシウムやアルミニウムは白を発色します。花火師は金属の配合によって色を作り出しています。
8. 「線香花火」は日本生まれ
線香花火は日本で生まれた花火です。もともとは藁の先に火薬をつけて香炉に立てて楽しんだことから「線香花火」と名付けられました。火花が「牡丹→松葉→散り菊」と変化していく繊細さは、日本の花火文化を象徴しています。
9. 「花火」は夏の季語
俳句では「花火」は夏の季語として定着しています。「花火」「遠花火」「花火師」など、花火に関する季語は複数あり、夏の夜の風情を詠む際に欠かせない存在です。
10. 英語の “fireworks” との比較
英語では花火を「fireworks(火の作品)」と呼びます。日本語の「花火」が自然の花に喩えるのに対し、英語は人工的な「作品」と捉えている点が対照的です。火を花と見るか作品と見るか、文化による感性の違いが表れています。
火を花に見立てた「花火」。江戸の夜空に咲いた光の花は、鍵屋と玉屋の競い合いの中で技術を磨き、世界に誇る球形の美へと昇華しました。夏の夜を彩る一瞬の花は、日本人の美意識そのものです。