「調布(ちょうふ)」の語源は?布を税として納めた古代の地名の由来
調布市はどこにある?
調布(ちょうふ)は東京都の多摩地域に位置する市で、JR中央線・京王線沿線にあります。人口約24万人、アニメ制作会社が多く集まる「アニメの街」としても知られ、「鬼太郎」の作者・水木しげるが長年暮らした地でもあります(駅前に水木しげるロードならぬ妖怪ブロンズ像がある)。新宿から電車で約20分という立地から住宅地として発展し、映画・テレビ関係者も多く住む文化的な街です。
「調布」の語源は古代の税制
「調布(ちょうふ)」という地名の語源は、古代日本の税制にあります。奈良時代(710〜794年)の律令制では、庶民が国家に納める税として「租(そ)・庸(よう)・調(ちょう)」という三種の税がありました。このうち「調(ちょう)」は各地の特産物を現物で納める税で、多摩川周辺では絹・麻などの布(ぬの)が調として徴収されていました。「布を調(税)として納める地」が「調布(ちょうふ)」の地名の起源です。
多摩川沿いの布産業
調布周辺は古代から多摩川の清流を利用した布の生産・染色が行われていた地域です。多摩川は「玉川」とも書き、布を織る・晒す(さらす)のに適した清流として知られていました。特に白い布を川で晒す「布晒し(ぬのざらし)」の作業が盛んで、「調布」の名はこの布産業の痕跡とも言われます。現代でも多摩川沿いには「布田(ふだ)」「下布田(しもふだ)」などの布にちなんだ地名が残っています。
「調(みつぎ)」という古代の税
「調(みつぎ)」は「貢(みつぎ)」とも書き、地方の産物を中央(都)に献上することを意味します。奈良時代の律令制では、各地方は稲(租)・労役(庸)・特産物(調)を税として納める義務があり、多摩地域の農民は絹・麻布などを「調」として大和(奈良)の中央政府に納めていました。「調布」という地名は、この古代税制の実態を地名として伝える歴史的な証人です。
水木しげると調布
漫画家の水木しげる(1922〜2015年)は1959年に調布市に移住し、亡くなるまでの約56年間を調布で過ごしました。「ゲゲゲの鬼太郎」の連載を調布から発信し続けたことから、調布は「妖怪の街」としても知られます。調布駅周辺には鬼太郎・ねこ娘・目玉おやじなどのキャラクターのモニュメントが置かれ、水木プロダクションも調布市内にあります。調布のアニメ文化の中核に水木しげるの存在があります。
調布の地理と多摩川
調布市は多摩川の南北にまたがっており、多摩川を挟んで神奈川県川崎市と接しています。多摩川沿いには多摩川緑地公園が整備され、市民の憩いの場となっています。また調布飛行場(東京都調布飛行場)があり、伊豆大島・三宅島・八丈島などの離島へのアクセス拠点として機能しています。多摩川の水と布産業の歴史が語源にある「調布」ですが、現在は都市化が進んだ住宅地・文化都市として発展しています。
「調布」という地名が示す古代の記憶
「調布」という地名は、古代日本の律令制と多摩地域の布産業という二重の歴史が凝縮した名前です。現代の調布市民の多くは「調布の由来を知らない」まま生活していますが、毎日使う市名・駅名に奈良時代の税制の記憶が刻まれています。東京近郊に数多く残る古代語源の地名のひとつとして、「調布(ちょうふ)」はことばが歴史をいかに保存するかを示す好例といえます。