「琵琶湖」の語源――湖の形が楽器の琵琶に似ていることから名づけられた


1. 「琵琶湖」の語源

「琵琶湖(びわこ)」の語源は、湖の形が弦楽器の「琵琶(びわ)」に似ていることです。上空から見た琵琶湖の輪郭が、琵琶の胴体の丸みを帯びた形状に重なることから「琵琶湖」と名付けられたとされます。琵琶の胴は洋ナシ型の丸い形をしており、琵琶湖の細長い南部と広い北部の組み合わせがこれに似ています。

2. 「琵琶(びわ)」という楽器

「琵琶」は中東・中央アジア起源の弦楽器で、シルクロードを経て奈良時代に中国から日本に伝来しました。撥(ばち)で弦を弾く奏法で「びわ(びぃわぁ)」という音がすることから「琵琶」と名付けられたという説があります。平家物語を琵琶を弾きながら語る「平家琵琶(琵琶法師)」で知られる楽器です。

3. 琵琶湖の古称は「淡海(あわうみ)」

琵琶湖の古い呼び名は「淡海(あわうみ・おうみ)」でした。「淡(あわ)=淡水(塩気のない)」「海(うみ)=大きな水域」という意味で、「淡水の海」を指します。「近江(おうみ)」という旧国名もこの「淡海(おうみ)」が変化したもので、「近い淡海(近くの大きな淡水域)」という意味です。

4. 琵琶湖の大きさ

琵琶湖は日本最大の湖で、面積は約670平方キロメートル(東京23区とほぼ同じ大きさ)です。滋賀県の面積の約6分の1を占め、滋賀県の象徴的存在です。最深部は約104メートルで、湖水が完全に入れ替わるには約19年かかると言われています。

5. 琵琶湖の歴史的な重要性

琵琶湖は古来から交通・交易・水産業の要所でした。湖上を行き来する「湖上交通(こじょうこうつう)」は古代〜江戸時代にかけて重要な物流路で、「丸子船(まるこぶね)」と呼ばれる木造船が米・材木・塩などを輸送していました。また、近畿地方の水がめとして関西の水道水の約60%(近畿の人口の1400万人分)を供給しています。

6. 「近江商人(おうみしょうにん)」と琵琶湖

「近江商人」は琵琶湖周辺(近江国)を拠点に全国に行商した商人たちで、江戸時代を代表する大商人集団の一つです。「三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)」という商売哲学で知られ、伊藤忠商事・丸紅・高島屋・西武グループなど現代の大企業の創業者にも近江商人の系譜を引く人物がいます。

7. 「ビワマス」という固有種

琵琶湖には「ビワマス(琵琶鱒)」をはじめ、固有種が多く生息しています。ビワマスはサクラマスの亜種で、琵琶湖にのみ生息する希少魚です。他にも「ニゴロブナ」(鮒寿司の材料)「ホンモロコ」「コアユ」など、琵琶湖固有の魚介類が地域の食文化を形成してきました。「鮒寿司(ふなずし)」は琵琶湖を代表する発酵食品です。

8. 琵琶湖の環境問題

1970〜80年代、琵琶湖では農業排水・生活排水による富栄養化が進み、「琵琶湖の赤潮」が問題となりました。1977年の「アオコの大量発生」をきっかけに、滋賀県民がリン(りん)を含む合成洗剤の使用廃止を訴える「石けん運動」が起き、全国的な注目を集めました。現在は水質改善が進んでいます。

9. 琵琶湖疏水(びわこそすい)

「琵琶湖疏水(びわこそすい)」は1890年(明治23年)に完成した、琵琶湖から京都への人工水路です。京都の飲料水供給・灌漑・水力発電・舟運を目的に建設された明治の大工事で、当時の土木技術の粋を集めた事業でした。現在も京都市の水道水の重要な水源として機能しています。

10. 「琵琶」という漢字の音の由来

「琵琶(びわ)」という漢字の読みは、楽器を弾いたときの音「びぃ(上弦)・わぁ(下弦)」を文字化したものという説があります。「琵」は上から下に弾く動作、「琶」は下から上に弾く動作を表し、弾き方と音を一体にした漢字表現です。琵琶湖の「琵琶」には、この楽器の音のイメージが詰まっています。


楽器の形から生まれた「琵琶湖」という名前。空から見た湖の姿を琵琶に見立てた古人の感覚が、日本最大の湖の名前として今も生き続けています。