「旭川(あさひかわ)」の語源は?アイヌ語「チュプ・ペツ」が変わった地名


「旭川」はアイヌ語を和語に訳した地名

北海道旭川市(あさひかわし)の地名は、アイヌ語地名を日本語に訳した「意訳地名」の代表例です。アイヌ語地名をそのまま音写(当て字)するのではなく、意味を日本語に訳して「旭川」という漢字・和語の地名を作ったという点が特徴的です。

アイヌ語「チュプ・ペツ」の意味

旭川の語源となったアイヌ語は「チュプ・ペツ(chup-pet)」とされます。「チュプ(chup)」は「太陽・日(ひ)」を意味し、「ペツ(pet)」は「川・河川」を意味するアイヌ語です。「チュプ・ペツ」を直訳すれば「太陽の川・日の川」となります。「太陽=旭(あさひ)」と意訳し、「日の川」を「旭川(あさひかわ)」と訳したことで現在の地名が成立しました。

「意訳地名」という命名の方法

「意訳地名」はアイヌ語の意味を日本語に翻訳して地名を作る方法で、北海道には音写地名(アイヌ語音をそのまま漢字に当てた地名)と意訳地名の両方があります。音写地名の例が「札幌(さっぽろ)」「網走(あばしり)」「釧路(くしろ)」などです。意訳地名の例が「旭川」のほかに「白老(しらおい・アイヌ語で小さなオオウバユリの群生地)」「紋別(もんべつ・アイヌ語で静かな川)」などがあります。意訳地名は漢字から意味が直感的に理解できる一方、元のアイヌ語との対応がわかりにくくなるという側面があります。

旭川の開拓と屯田兵

旭川に本格的な和人(日本人)の入植が始まるのは明治時代(1890年代)で、屯田兵(とんでんへい)の入植が都市形成の基礎となりました。旭川には第七師団(きゅう陸軍)が置かれ、北海道中央部・北部の防衛・開拓の拠点となりました。第七師団は日露戦争(1904〜05年)をはじめ多くの戦役に出征し、「旭川師団」として北海道の軍事史に深く刻まれています。

旭川ラーメンと食文化

旭川は「旭川ラーメン」が全国的に知られる食文化の都市です。旭川ラーメンは醤油ベースのスープに動物系・魚介系のダブルスープ、縮れ麺が特徴で、厳寒の旭川の冬に合わせて脂を多めに使い熱が逃げにくい工夫がされています。「蜂屋(はちや)」「梅光軒(ばいこうけん)」など老舗店が有名で、「札幌ラーメン(味噌)」「函館ラーメン(塩)」「旭川ラーメン(醤油)」は北海道三大ラーメンと呼ばれます。

旭川の気候と「日本最低気温」

旭川は北海道の内陸部に位置し、盆地地形のため夏は暑く冬は極寒という大陸性気候を示します。1902年(明治35年)1月25日、旭川では日本の公式観測史上最低気温となる−41.0℃が記録されており、この記録は現在も破られていません。この気候を活かして旭川では冬季観光(旭山動物園・ウインタースポーツ)が盛んで、厳しい寒さが逆に観光資源となっています。

旭山動物園と観光

旭川市旭山動物園は、かつて来場者数の低迷から廃園の危機に瀕していましたが、2000年代に行動展示(動物の自然な行動を見せる展示方法)を導入して大ブレークし、上野動物園を抜いて全国一の来場者数を記録したこともあります。ペンギンが雪の上を行進する「ペンギンの散歩」・アムールトラの水中ダイブなどが人気で、国内外から多くの観光客が訪れます。「旭川」という地名を全国的に知らしめた観光スポットのひとつです。

「旭」という字の意味と地名への使用

「旭(あさひ)」は「朝日・昇る太陽・夜明けの光」を意味する漢字で、力強さ・清らかさ・明るい未来のイメージを持ちます。明治時代には地名・人名・屋号などに「旭」を使うことが流行し、「旭川」以外にも各地に「旭○○」という地名・施設名が作られました。アイヌ語の「太陽の川」という意味が「旭川」という漢字地名に転換されたことは、明治政府の北海道開拓政策がアイヌ文化を日本語・漢字の体系に組み込もうとした時代の流れを反映しています。